家族の日常を撮影し、YouTubeに投稿する。子どもの成長を記録しながら、多くの人に楽しんでもらえる。そんな家族系YouTuberの活動に、いま大きな変化が起きている。2026年11月1日、ABEMA TIMESは家族系チャンネルの収益化停止と、子どもの権利をめぐる議論を伝えた。
私がこのニュースで気になったのは、「家族の思い出を動画にすること」と「子どもの日常を世界中へ公開して収益を得ること」は、同じように見えてまったく同じではない、という点だ。親に悪気がなくても、動画に映った本人が何年後かに困ることはある。一方、家族で撮影を楽しみ、責任を持って活動している人まで一括りに否定するのも違うと思う。
「テレビでは子役が普通に出演しているのに、YouTubeだけダメなの?」「子どもが自分から出たいと言えば問題ない?」「収益化が止まると動画も全部消える?」。今回は、こうした疑問を報道とYouTube公式ポリシー、フランスの法律をもとに一つずつ整理したい。子どものいる家庭はもちろん、動画を見ているだけの人にも関係する話だ。
家族系YouTuber停止の実態
【波紋】相次ぐ「家族系YouTuber」の収益化停止 テレビはOK、動画だとダメ?
— ライブドアニュース (@livedoornews) November 1, 2026欧州では未成年者の肖像権やプライバシーを保護する法整備が進み、日本国内でもYouTubeの収益化ポリシーに基づき、収益化が停止されるチャンネルが相次いでいるという。 https://t.co/NLD1bXfLkV https://news.livedoor.com/article/detail/32708416/
何が起きた?報道された実例
報道で具体的に紹介されたのは、家族で活動する「しょうやん男三兄弟」だ。ABEMA TIMESによると、運営するしょうやんパパさんは2026年7月、YouTubeから収益化停止の通知を受けた。2026年11月1日の番組記事では、取材時点のチャンネル登録者数が約62万人と紹介されている。
通知された理由について、同記事は「未成年の意に反して注目を浴びることを促すコンテンツ」だったと伝える。運営者は過去動画を約2200本削除し、再申請したものの、記事時点では収益化が再開していなかったという。これは本人の説明を番組が報じたもので、私たち第三者が個々の動画について独自に違反を判定できるわけではない。
「2200本も消したのに戻らないの?」と驚いた人もいると思う。ただし、動画の大量削除が必ず収益化再開につながる仕組みではない。YouTubeの審査ではチャンネル全体の状況が確認される。報道された事例は重要だが、すべての家族チャンネルが同じ理由で停止されているという証拠にはならないことも押さえておきたい。
収益化停止とチャンネル削除は別
まず最初に区別したいのが、「動画を公開できるか」と「その動画で収益を得られるか」だ。YouTubeパートナープログラムの資格が停止されると、広告や関連する収益化機能を使えなくなる場合がある。一方、ポリシーに沿ったオリジナル動画の投稿を続けられることもある。収益化停止イコールアカウント削除、ではない。
また、動画単位の広告制限、チャンネル全体の収益化停止、コミュニティガイドラインに基づく動画削除は同じ措置ではない。ニュースを見たときにこの違いを混同すると、「家族の映像が全部禁止になった」と受け取りやすくなる。公式の説明を読めば、問題になるのは子どもが映っているという事実だけではないと分かる。
収益が止まれば、機材費、編集費、人件費などをまかなっていた運営者には現実的な打撃がある。けれども、活動を仕事にしているからこそ、家族内の合意や公開範囲を丁寧に見直す責任も大きくなる。収益を得ること自体と、子どもの権利を守ることは、対立する二者択一ではないはずだ。
YouTube公式が問題視すること
YouTubeの「子どもの安全に関するポリシー」では、18歳未満の人の心身を危険にさらす内容、精神的苦痛を与える内容、未成年者を辱めたり、望まない注目にさらしたりする内容への対応が説明されている。家族の日常をそのまま載せたつもりでも、視聴する第三者から見れば、子どもの弱い立場が表に出る場合がある。
たとえば、嫌がっている子に何かを強要する演出、本人に強い恥ずかしさを感じさせる場面、危険なチャレンジ、学校や自宅に関する個人情報の露出などは注意が必要だ。視聴者が笑えるかどうかだけでは安全性は測れない。撮影している大人が面白いと感じても、映る子が同じ気持ちとは限らないからだ。
もっとも、特定の場面が必ず収益化停止につながると断定することもできない。YouTubeは自動システムと人間による審査を組み合わせ、個々の状況を評価していると説明している。だから「この場面を消せば絶対に大丈夫」という裏技を探すより、動画づくり全体の考え方を見直すことが大切になる。
「子ども向け設定」とは違う話
ここで混同されやすいのが、YouTubeの「子ども向けコンテンツ」という視聴者設定だ。この設定は、誰を主な視聴対象にしているかという問題で、子どもが動画に出演しているかどうかとは別の判断になる。家族の日常動画だから一律に「子ども向け」だとも、設定を変えれば安全上の問題が解決するともいえない。
YouTubeは児童オンラインプライバシー保護法などへの対応として、投稿者に視聴者の設定を求めている。未成年者が映るコンテンツについては、ポリシーに違反していなくても、コメントやライブ配信など一部の機能が制限される場合もある。これはチャンネル全体の広告収益化資格とは別の話だ。
収益化、年齢制限、視聴者設定、コメント機能。名前の似た仕組みが重なっているから、ニュースの見出しだけでは分かりにくい。運営者なら公式ヘルプを確認する。視聴者なら「本当に何の措置を受けたのか」を確かめる。それだけでもSNSでの誤解や不要なバッシングを減らせる。
共感が集まる動画の落とし穴
家族系動画の魅力は、きれいに整えた宣伝映像とは違う自然さだと思う。兄弟げんかのあとに仲直りする場面、失敗して泣いた日、親子で挑戦して笑い合う時間。作り込んでいないからこそ「うちも同じ!」という共感が生まれる。しかし、共感されることと、公開してよいことはイコールではない。
たとえば大人なら、失敗談を自分で公開して、反応が嫌なら次からやめる選択ができる。ところが子どもの場合、動画の編集、タイトル、サムネイル、公開日、収益の扱いまで大人が決めていることも多い。本人は単に遊んでいたつもりなのに、いつの間にか多くの人に知られる映像になっているかもしれない。
再生数が伸びるほど、次も同じような強い場面を求めたくなる誘惑は生まれる。感動や泣き顔を否定したいわけではない。ただ、本人が後から見たときにも尊重されていると感じられるか。私はそこを、面白さより先に考えたい。面白い思い出が、本人にとってつらい記録になってはもったいない。
テレビと動画の決定的な違い
テレビの子役はなぜ出演できる?
今回のニュースでは「テレビの子役はOKなのに、家族系YouTuberはダメなのか」という疑問も取り上げられた。ここでの答えは、テレビが無条件に許されているからではない。テレビや映画では、制作会社などが企画を立て、契約や制作体制のもとで出演してもらうことが多い。家庭で自分の子どもを撮影する場合とは、関係者の立場が違う。
ABEMA Primeに出演した深澤諭史弁護士は、テレビの子役と家庭のYouTube撮影とでは、指揮監督や契約関係が異なり、労働法上の扱いにも差が生じると説明した。家庭で撮った動画については、そもそも労働と評価できるかが難しい問題になるという見解だ。これは個別事案の法律判断をすべて確定するものではなく、仕組みの違いを示した説明として理解したい。
もちろんテレビにも、子どもの安全や尊厳への配慮は欠かせない。視聴率のためなら嫌がる子を映していい、という理屈にはならない。大切なのは「どちらの媒体か」より、「誰がどんな責任を持ち、どのように子どもの意思を確認しているか」だ。テレビだけが善、YouTubeだけが悪という話にはしない方が、問題の中心が見えてくる。
家の中が撮影現場になる難しさ
家庭での撮影には独特の難しさがある。テレビのスタジオなら撮影と私生活を分けやすいが、自宅でカメラを回す場合、子どもにとっての生活空間そのものが仕事のような場所になることがある。朝起きたところから寝るまで、カメラがある生活が日常になったら、どこがオフなのか曖昧になりやすい。
親は「いつもどおりでいいよ」と言ったつもりでも、子どもがカメラに気付いて普段より明るく振る舞うことはある。親の期待に応えたい、兄弟に負けたくない、視聴者に褒められたい。そんな気持ちがあると、本音を伝えるハードルは高くなる。子ども自身が出演を楽しんでいる場合もあるからこそ、その日の気分を確かめることが必要だ。
撮影日を決める、寝室や浴室などを撮らない、家族のけんかを再生数の材料にしない、カメラを置かない時間を増やす。こうしたルールがあれば、記録する人と記録される人の距離を作れる。何気ない家庭の時間を、すべてコンテンツに変えなくてもいい。それは発信を続けるための工夫でもある。
「出たい」と言えば十分なのか
「うちの子は自分から出演したいと言っている」。その説明には、もちろん耳を傾ける必要がある。ただし、子どもの「出たい」がどこまで理解と納得に基づくものなのかは、年齢や成長段階によって変わる。撮影が楽しいことと、顔や生活が何年もインターネット上に残ることは、別の問題だからだ。
番組では保育士のてぃ先生が、本人の気持ちは変化し得るうえ、家族の期待に合わせてしまう可能性があると指摘している。子どもが笑顔で映っている事実だけを見て「完全に同意している」と結論付けるのは難しい。小学生になったら恥ずかしくなることもあるし、中学生になってから昔の動画を消してほしくなることだってある。
だから私は、撮影前に一度だけ許可を取るより、公開前にも確認し、公開後も取り下げを求められる形がいいと思う。本人が急に嫌がり始めても「ここまで頑張ったのに」と責めない。出演を断っても家族の中での立場が変わらない。そんな安心感があって初めて、子どもは「今日はやめる」と言いやすくなる。
日本の法律はどう扱っている?
日本にもプライバシーや肖像に関する権利を考える法的な枠組みはある。一方、家族の自宅撮影で子どもが継続的に出演することを、テレビの出演契約と同じ形で一律に整理するのは簡単ではない。深澤弁護士は、プラットフォームと投稿者の関係にも法的な空白があると指摘した。
ただし「家で撮った動画なら法律が何も適用されない」という意味にはならない。子どもの権利、プライバシー、児童の保護、契約、個々の事情など、さまざまな観点が関係する。個別の権利侵害があるか、誰にどんな責任が生じるかは状況によって異なるため、記事の一文だけで違法・適法を断定しないことが大切だ。
個人情報保護委員会は、本人を識別できる写真は一般に個人情報に該当し得ると説明し、公開画像についてはプライバシーや肖像権の問題もあり得ると案内している。法律を細かく知らなくても、「親だから何を公開してもいいとは限らない」という点は覚えておきたい。生活を守る感覚が、法的な争いを避ける第一歩にもなる。
テレビとYouTubeを比べると
違いを整理すると、テレビは制作側が企画・編集・放送の流れを持ち、子役が出演する場合には制作会社などとの関係が前提になりやすい。YouTubeの家族動画は、撮影者である親が公開ボタンを押せば、広い範囲に届く。一般的な運営の形が違う以上、リスクを管理する仕組みも同じではない。
一方、共通する部分も多い。どちらも子どもが出演すれば、その子の表情や発言が他人に見られる。番組の切り抜きも動画の切り抜きも、本人の望まない文脈で拡散される可能性がある。つまり「テレビだから安心」「個人チャンネルだから自由」という単純な線引きはできない。
視聴者の側も、子どもが泣いている映像を見て面白がるだけでなく、なぜその場面が公開されたのかを考えられるといい。画面の向こうには、いつか大人になる一人の人がいる。出演する子どもをコンテンツではなく人として見る。その視点は、テレビにもネットにも共通する大切な基準だ。
欧州の法律と家庭でできる対策
フランスの2020年法とは
欧州の事例として注目したいのがフランスだ。2020年10月19日、フランスでは16歳未満の子どもの画像が動画プラットフォームで商業利用されることを規律する法律が制定された。一定の活動形態では許可などの枠組みが設けられ、家庭の配信でも、子どもが主役となる動画の投稿量や収益が基準を超える場合に申告の仕組みが用意されている。
この法律では、子どもの撮影時間、学校生活、健康、安全、収益に関する保護が重要なテーマとなる。制度には条件や対象範囲があるため、フランスで子どもが動画に出る行為そのものを全面禁止した、という説明は正確ではない。また、フランスの法律を「欧州全域で同じ規制」と言い換えることもできない。
なぜここまで踏み込んだ仕組みが必要になったのか。家庭で撮影していても、大きな収益が発生すれば子どもの出演が事業の中心になることがあるからだ。家族の記録と商業活動の境界が曖昧になったとき、子どもの時間や将来の利益を誰が守るのか。フランスの取り組みは、その問いに法律で向き合った例といえる。
2024年法は何を守るのか
さらにフランスでは2024年2月19日、子どもの肖像権を尊重するための法律が成立した。民法には、父母が共同して未成年の子どもの肖像に関する権利を守ること、子どもの年齢や成熟度に応じて本人を関与させることが明記された。単に親が同意すれば終わりではなく、本人の視点を尊重するところに特徴がある。
この法律は、動画で稼ぐ有名な一家だけの問題を扱っているわけではない。普通の家庭が子どもの写真をSNSに載せることにも、同じようにプライバシーへの配慮が求められる。親同士で意見が分かれたときの裁判所による対応や、深刻な被害がある場合の保護措置にも関係する仕組みが整えられた。
フランスの個人情報保護当局CNILは、子どもの写真や動画のSNS公開にリスクがあると注意を促している。保護者に求められるのは、投稿する権利を振りかざすことより、子どもが将来、自分の写真をどう扱いたいと考えるか想像すること。家族を大切にする方法として「載せない」を選ぶ自由もあるはずだ。
シェアレンティングとは何か
子どもの日常を親がSNSに投稿することは、シェアレンティングと呼ばれる。英語の「共有」と「子育て」を組み合わせた言葉だ。家族アルバムを友人に見せる感覚で始めた投稿が、いつの間にか不特定多数に届くこともある。動画でお金を稼いでいなくても、公開のリスクはゼロにはならない。
たとえば、入学式の写真に学校名が写り込む。公園の投稿を毎週同じ曜日に上げる。制服や近所の建物から生活圏が推測される。ひとつひとつは小さな情報でも、組み合わせることで居場所が分かる可能性がある。政府広報オンラインも、SNSの文章や写真の背景から居場所が特定される危険に注意を呼びかけている。
私が特に気をつけたいのは、写真や動画の価値が子どもの成長によって変わることだ。幼いころには微笑ましかったエピソードが、思春期には恥ずかしい話になるかもしれない。親のアカウントなのに、実際には子どもの人生の記録が公開されている。そこを意識するだけで投稿前の判断は変わってくる。
公開前に見直したい7つの点
「じゃあ家族の動画は全部やめた方がいいの?」。そこまで極端に考える必要はない。ただ、公開してしまうと取り戻せない情報もある。私は動画を投稿する前に、子どもの立場で次の項目をチェックする方法が役立つと思う。再生数のための確認ではなく、その子が安心して暮らすための確認だ。
第一に、本人は本当に出演したいか。第二に、泣き顔や失敗、叱られる場面など、あとで恥ずかしくならないか。第三に、学校名・住んでいる地域・自宅周辺の景色が分からないか。第四に、寝室や浴室のような私的な場所が含まれないか。第五に、家族以外の子どもが映っていないか。第六に、タイトルやサムネイルが本人をからかっていないか。第七に、本人が後日削除を求めたとき対応できるか。
一度「大丈夫」と思っても、時間を置いて見返すと気付くことがある。投稿を急がず、一晩置いて確認するのも手だ。親が編集の面白さに夢中になったときは、もう一人の大人に見てもらう方法もある。家族の意見が割れたら、公開しない選択を優先する。動画にできない日常があっても、家族の価値は何も減らない。
子どもが嫌がったらどうする?
子どもが「この動画、消して」と言い出したとき、大人には残念な気持ちがあるかもしれない。時間をかけて編集し、たくさんの人から褒められた動画ならなおさらだ。でも、それを理由に本人の不安を押し切ると、親子で話し合う機会を失ってしまう。まずはどの部分が嫌なのか、責めずに聞くことから始めたい。
投稿の公開設定を変える、該当部分を再編集する、動画を取り下げる。対応にはいくつか選択肢がある。ただし、一度インターネットに公開した内容は、第三者の保存や転載によって完全には消せない場合もある。だからこそ「削除すれば元どおり」と安易に考えず、最初から公開範囲を慎重に選ぶ方が負担は小さい。
子どもの気持ちは成長に合わせて変わる。昨日は楽しかった動画も今日は見せたくない、という日があるだろう。大人だって昔の写真を勝手に公開されたら困ることがある。家族なのだから気にしなくていい、と片付けず、ひとりの人として意思を尊重する。それが安心して思い出を残すための土台になる。
もし収益化が止まったら
実際にYouTubeを運営している人にとっては、収益化停止にどう対応するかも重要だ。最初にするべきは、YouTube Studioで通知と理由を確認し、公式ヘルプの案内に沿って状況を整理すること。SNS上の噂を根拠に、急いで全動画を削除するのは慎重になった方がいい。
YouTubeの公式ヘルプでは、パートナープログラムの資格停止に対して、原則として停止後21日以内の再審査請求や、停止から90日経過後の再申請の制度が案内されている。停止前通知を受けた場合は7日以内の対応が必要になる場合もある。適用される期限は通知内容と手続きの種類によって変わるので、各自の画面で確認してほしい。
特に大切なのが、再審査請求の前に動画を削除しないよう案内されている点だ。YouTubeは現在のチャンネルの状態を審査するため、何を直せばよいか分からないまま大量削除すると判断材料を失う可能性がある。再審査請求と、改善後の再申請は別の手続き。仕組みを理解してから動くことで、無駄な作業や後悔を減らせる。
動画を見ている私たちにできること
ここまで投稿する側の話が中心だったが、見る側にもできることはある。子どもが困っている場面を見かけたら、からかうコメントで盛り上げない。特定の家庭を決めつけて攻撃しない。子どもの名前や学校を探し回らない。安全上の懸念があるときは、プラットフォームの報告機能を使う方法がある。
報道に登場した保護者の考え方に賛否があるのは自然だ。それでも、動画の一場面だけで家庭のすべてを断定するのは危険だし、子ども本人への攻撃は論外だ。今回の議論を「誰かを叩くための材料」にしてしまえば、守りたいはずの子どもがさらに注目を浴びてしまう。
むしろ、動画を見る私たちが「子どもを無理に泣かせなくても面白い」「顔を出さなくても応援できる」という価値観を広げていけたら、発信する側の選択肢も増える。家族の笑顔を楽しむ文化と、子どものプライバシーを守る文化は両立できる。視聴者の反応も、その環境を作る一部だと思う。
家庭の撮影ルールをどう決める?
家族で動画を作るなら、最初に決めておきたいのは撮影する場所と時間だ。帰宅してすぐ、宿題の途中、食事中、寝る前。こうした時間が毎日カメラの対象になると、子どもは家にいても気を抜きにくくなる。撮影する日を限定する、カメラを置かない部屋を作る、体調が悪い日は企画より休息を優先する。難しい約束でなくていい。小さくても守れるルールを家族全員が共有することで、安心できる日常を残しやすくなる。
もう一つ必要なのは、出演を断っても不利益がないという約束だ。撮影をやめたら親が不機嫌になる、家族の目標に協力していないと言われる、兄弟だけが褒められる。そんな雰囲気があれば、子どもは本心を隠してしまうかもしれない。撮影前に「出たい?」と尋ねるだけでなく、「今日は映らなくても大丈夫」と先に伝えることが大切だ。返事を急かさず、嫌だと言った理由を問い詰めない。断る選択肢があるからこそ、楽しい参加も成り立つ。
ルールは一度決めたら終わりではない。新学期、進級、友達関係の変化、受験の時期など、環境が変われば希望も変わる。数か月ごとに公開済みの動画を見返して、本人に気になる内容がないか確認してもいい。家族の中だけで判断が難しい場合は、公開しないまま保管する選択もある。思い出として残したい気持ちは、世界中に公開しなくても満たせる。子どもの安心を中心に置くと、家族のルールも自然に整っていく。
顔を出さない発信という選択
家族の記録を投稿する方法は、子どもの顔を正面から映すことだけではない。料理に挑戦した日の手元、工作の完成品、家族で歩いた景色、親が子育てで学んだこと。本人の顔や名前を出さずに伝えられるテーマはたくさんある。子どもが主役のチャンネルを続けてきた場合でも、家族の会話から親の経験談へと企画を変えることはできる。視聴者が好きになったのは、必ずしも顔そのものではなく、その家族らしい発想や温かさかもしれない。
もちろん、顔を隠したからすべて安心というわけでもない。特徴的な声、学校行事、誕生日、住んでいる地域の映像などから、本人が推測される可能性がある。映像だけでなく、字幕、サムネイル、概要欄、コメント欄も含めて確認したい。特に、子どもの失敗をからかうタイトルにしてしまうと、顔が映っていなくても本人の尊厳に関わる問題が残る。顔出しをしない工夫と、本人を大切にする編集はセットで考える必要がある。
そのうえで、子どもが成長して自分の発信をしたくなったときには、年齢に応じてルールを一緒に学んでいけばいい。公開範囲の設定、知らない人への返信、個人情報の扱い、トラブルが起きたときの相談先。これらは家族で動画を作るかどうかに関係なく役立つ知識だ。禁止することだけが保護ではない。安心して選べる力を育てることも、子どもの未来を守る方法の一つだと思う。
収益と子どもの将来をどう考える?
家族系動画が仕事になっている場合、広告収入や企業案件の売り上げをどう管理するかも考えたい。撮影を手伝う大人には報酬や経費の考え方がある一方、子ども自身が動画の魅力を支えているケースもある。家庭の事情や契約形態はそれぞれ違うため、全世帯に当てはまる単純な配分比率は示せない。それでも「子どもが出演して生まれた利益を、本人の将来にどうつなげるか」を話題にする意味は大きい。
収益があることで、旅行や体験、学びの機会が増える家庭もあるだろう。ただ、それを理由に子どもが出演を断れなくなるなら、家族として見直したい。収益の管理を大人だけで抱え込むのではなく、成長に応じて分かる言葉で説明する。教育費のために使うのか、将来のために残すのか、撮影や編集の経費は何なのか。子どもの年齢に合わせた透明性があれば、動画を作る意味を家族で考えやすくなる。
もう一つ忘れたくないのは、チャンネルが大きくなっても、子どもはいつか自分の道を選ぶということだ。親にとっての長年の活動が、子どもにとっての一生の仕事になるとは限らない。出演をやめたい、別のことを始めたい、自分の名前で発信したい。そのどれも尊重できるように、収益を子どもの出演だけに頼りすぎない工夫も必要になる。動画の成功より大切なのは、その先にある人生の選択肢を狭めないことだ。
まとめ|家族の記録と権利を守る
今回のニュースを「家族系YouTuberが全部禁止された」と受け取るのは正確ではない。2026年7月の具体的な収益化停止事例が報じられた一方で、YouTube公式が重視しているのは、未成年者を望まない注目や危険、精神的な負担から守ることだ。収益化停止、動画削除、コメント制限もそれぞれ別の措置になる。
テレビとの違いは、子どもが出演するという見た目だけでは分からない。制作体制や契約、撮影する大人と子どもの関係が違うからこそ、保護の仕組みも変わってくる。フランスでは2020年に子どもの画像の商業利用を扱う法律、2024年に子どもの肖像権を守る法律が整備され、家族内での意思確認にも目が向けられている。
私は、家族の動画そのものを否定する必要はないと思う。うれしかった日を記録して共有することには価値がある。でも、出演する子がいつでも断れて、後から考えを変えることができる。そんな余白がある方が、家族の記録はもっと温かいものになる。再生数より先に、画面に映る一人の人生を大切にしたい。
参考資料・関連URL(2026年11月2日時点で確認)
ABEMA TIMES(2026年11月1日):https://times.abema.tv/articles/-/10285282
YouTube ヘルプ:子どもの安全に関するポリシー:https://support.google.com/youtube/answer/2801999?hl=ja
YouTube ヘルプ:チャンネルの収益化が無効になっている:https://support.google.com/youtube/answer/1727191?hl=ja
YouTube ヘルプ:再審査請求の手続き:https://support.google.com/youtube/answer/9564590?hl=ja-US
フランス2020年法(Légifrance):https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000042439054
フランス2024年法(Légifrance):https://www.legifrance.gouv.fr/eli/loi/2024/2/19/JUSX2306423L/jo/texte
フランス個人情報保護当局CNIL:https://www.cnil.fr/en/sharing-photos-and-videos-your-child-social-networks-what-risks
日本・個人情報保護委員会:https://www.ppc.go.jp/all_fad_index/fad1-6-1-q1/
政府広報オンライン:SNSからの居場所特定への注意:https://www.gov-online.go.jp/article/202603/entry-11158.html

