「顔をもっと小さくしたい。そのためなら感覚がなくなっても構わない」。もし美容外科でこんな希望を伝えられたら、医師はどう答えるべきなのか。本人の願いをかなえるのが正解なのか、それとも医師として止めるのが正解なのか。2026年11月、まさにこの問題を真正面からぶつけた討論動画が話題になった。
舞台はNewsPicksの討論番組「2Sides」。出演したのは高須クリニック名古屋院の高須幹弥医師と、東京・歌舞伎町で美容医療に携わる辻大成医師。進行役は加藤浩次さんだ。11月3日に公開されたYouTube動画には、「整形依存症になっていると思う」という強い言葉も登場した。
きっかけになったのは、辻医師が自分の美容整形に5000万円超を費やしてきたと語ったこと。本人の説明によれば、その金額には顔だけでなく体への施術も含まれる。さらに、過去の骨切り手術に伴う感覚の喪失や、目が閉じにくくなった経験まで打ち明けた。
高須医師は、希望している本人が納得していても、身体の機能を損なう手術は医師が断るべきだと主張。一方の辻医師は、リスクを自ら経験しているからこそ、強い希望を持つ人の気持ちに寄り添えると説明した。私がこの動画を見て一番気になったのは、どちらの考えが勝ったかではない。「自分のための美容整形」は、どこから「自分を苦しめる選択」に変わるのかという点だ。
この記事では、動画で確認できる発言をもとに両医師の違いを整理し、整形依存という言葉の扱い方、骨切り手術を考える際の注意点、そして美容医療を受ける前に確認したいことまで掘り下げていく。人物への診断や、公開されていない手術の詳細について推測で断定はしない。
元動画:NewsPicks「2Sides」高須幹弥×辻大成/加藤浩次。本記事が取り上げる発言は、提供された公開動画の文字起こしで確認できる範囲(約18分)を中心にしている。
5000万円整形の経緯
高須幹弥「そんな施術毎日患者にしててあなた辛くないですか?オトガイ神経を切って骨切りをする。そんな施術をしてはダメ。あなた自身が整形依存症」とはっきり目の前で突きつける。 高須幹弥が信頼される理由。 みきてゃは信頼できる https://t.co/ggRatcaDbF
— ひろゆかない (@hiroyukanai) November 4, 2026
辻大成医師が明かした14歳からの経験
番組で辻医師は、初めて美容整形を受けたのが14歳ごろだったと振り返った。昼食を抜くなどしてためた自分のお金を使い、施術を受けたという。本人によれば、それまで自信がなかったものの、容姿に手を加える経験を通じて前向きになれた。この成功体験が美容外科医を目指すきっかけの一つになったという話は、議論の前提として大切だ。
外見の悩みは、周囲から「気にしすぎ」と言われたからといって消えるものではない。毎朝、鏡を見るたびに気持ちが沈む人もいる。写真を撮られるのが苦手になり、人との交流を避けてしまう人もいる。美容医療によって前向きになれたという体験まで一律に否定すると、当事者が抱えてきたしんどさを見失ってしまう。
ただ、最初の施術で自信がついたことと、その後も繰り返す施術が毎回同じように役立つことは、必ずしも同じではない。辻医師は、顔の各部位を一通り手術した後も再び手術を重ね、気がつけば支出が5000万円ほどになったと語った。金額の大きさばかりが目立つが、私が注目したいのは「一度で終わるとは限らない」という体験のほうだ。
「顔面課金5000万円」の数字をどう読むか
動画の紹介や本人の自己紹介には「顔面課金5000万円超」という印象的な表現がある。ただし、番組中では体への施術も合計に含めていると説明している。したがって、「顔だけで5000万円を支払った」と確定した数字として扱うのは正確ではない。あくまで本人が語った、長年の美容医療への累計支出として理解したい。
また、施術費用が大きいことだけをもって精神疾患を診断することはできない。何に価値を感じ、お金を使うのかは人それぞれだ。何百万円も趣味に投じる人がいるように、美容への支出を重視する人もいる。しかし医療では、支払った金額以上に、身体への負担、日常生活への影響、判断する際の心理状態を慎重に見ていく必要がある。
「これだけお金をかけたのだから、次の施術でもっと良くなるはず」と考える場面には注意したい。過去の支出は戻らない。それでも、人は今までの努力を無駄にしたくなくて、追加の選択を正当化しがちだ。美容医療に限らず、買い物や投資、ゲームの課金などでも起こり得る身近な心理だと思う。
自分で受けたから伝えられること
辻医師は、美容外科医が自ら施術を経験していないのに、その良さを勧めることへの違和感も語った。自分で数多く経験することで、術後の経過やメリットだけでなく、不便さまで患者に伝えたいという考え方だ。これは単なる「見た目を変えたい」という話にとどまらず、医療を提供する側の自己認識と結び付いている。
実際に経験した人の言葉に説得力があることは確かだ。施術後の腫れがどんな気分なのか、痛みで不安になったとき何を考えたのか。教科書だけでは伝えにくい細かな感覚もあるだろう。しかし、ある医師の身体で起きたことが、別の患者にも同じように起きるとは限らない。治療を判断する材料は体験談だけではなく、医学的な根拠や個別の診察、代替手段の説明まで含めて考えたい。
加工アプリ並みの小顔は幸せなのか
辻医師が掲げる方向性として紹介されたのが、写真加工アプリが不要になるほどの小顔を目指すという発想だ。スマートフォンで撮った自分の顔を加工し、その画像に慣れると、今の姿に違和感を抱くこともあるかもしれない。動画で加藤さんが投げかけたのは、画面上の二次元で映える顔と、日常を生きる三次元の顔は同じように評価できるのか、という疑問だった。
この問いは意外と身近だ。証明写真では気にならなかったのに、動画の自分を見て落ち込んだ経験。反対に、写真では納得できなかったけれど、会って話すとその人の表情が魅力的に見えた経験。顔の印象は角度、光、表情、動きによって変わる。加工済みの静止画を唯一のゴールに設定すると、現実の身体に無理を求めてしまう可能性がある。
もちろん、小顔を希望すること自体が間違いという話ではない。「どうなりたいか」を考える自由は本人にある。ただし、その理想がSNSの画像から生まれたものなら、いま一度「その顔で毎日生活する自分」を想像してみたい。美しさと機能、写真と生活は、どちらか片方だけで測れないからだ。
神経をめぐる対立
骨切りで語られた感覚の喪失
討論の空気が大きく変わったのは、辻医師が自らの術後の状態を説明した場面だ。本人は、顔を大きく変えたいという希望を持ち、過去の骨切り手術で神経への影響を受けたと語った。そして現在、唇や口の周囲などに触れても感覚が分かりにくく、食べ物が付いても気づきにくいことがあると話した。
発言から分かるのは、辻医師が自分の経験として感覚障害を説明したことまでだ。手術記録や診療情報を確認できるわけではないため、具体的にどの神経にどのような処置が行われたか、誰が執刀したのか、医学的な経緯まで確定することはできない。ここは動画の強い表現と、検証できる事実を分けておきたい。
それでも、口周りの感覚が失われることが生活上の不便につながり得るという点は、十分に考える価値がある。たとえば食事の後に汚れが付いているか分からない、触れられた感覚が以前と違う、違和感のある場所を自分で把握しにくい。外見の仕上がりが希望どおりでも、こうした日常の小さな不便は長く続くかもしれない。
目が閉じにくいという告白も
辻医師はほかにも、目の周辺の施術を重ねた結果、目が完全に閉じにくいといった状態や、目の乾燥について語った。こめかみ周辺などで感覚が戻っていない部位があるという話も出ている。いずれも本人の申告であり、視聴者が映像だけから診断できる内容ではない。
美容整形のリスクというと、出血、腫れ、傷跡といった目に見えるものを想像しやすい。だが、身体には触覚、表情を作る筋肉の動き、まぶたの開閉、食事や会話のしやすさなど、普段は意識しない機能がある。見た目の変化を相談するときにも、こうした機能をどう守るかは欠かせない視点だ。
手術後の経過は個人差があり、すべての骨切りや目元の施術で同じ問題が起きるわけではない。逆に、SNSに美しい術後写真が並んでいるからといって、自分には合併症が起きないとも言い切れない。症例写真は完成形の一部を示す資料であって、その人の生活全体を映したものではないからだ。
本人が望めば医師は応じるべきか
ここで高須医師は、患者が感覚を失ってもよいから手術してほしいと求めても、医師として断るべき場合があるという考えを示した。そのうえで辻医師の手術歴について「整形依存症になっていると思う」と発言した。話題になった言葉だが、これは番組内で示された高須医師の見解であり、正式な診断が確認されたことを意味しない。
一方、辻医師は自分でも不自由さを感じながら、それでも理想に近づきたい気持ちがあったこと、経験したデメリットも含めて希望者へ伝えられると考えていることを説明した。こうして見ると、二人が争っていたのは単なる技術の優劣ではない。選択する本人の自由と、医療者が守るべき安全の境界線だった。
医療では、患者の同意が非常に大切になる。ただ、同意があればどんな処置でも正当化されるというわけではない。医師には適応を判断し、安全性や利益と不利益の釣り合いを考える責任がある。患者が望む結果を目指すことと、無条件に要求を引き受けることは別の話だ。
身近な例で考えると分かりやすい。体調を崩して病院に行き、「とにかく一番強い薬を出して」と頼んでも、医師は診察結果に合わなければ別の方法を説明するはずだ。美容医療も医療である以上、希望を聞くことと、医学的に行ってよいかを判断することの両方が必要になる。
「患者さん」と「お客様」の大きな違い
番組で印象に残ったのが、呼び方をめぐるやり取りだ。高須医師は来院者を「患者さん」と呼び、辻医師は「お客様」と呼ぶ。高須医師は、美容医療を商売だけとして扱えば、求められるままに施術を勧めてしまう危険があると問題提起した。医師と患者の関係を重視する考え方だ。
対して辻医師は、美容整形を希望する人を最初から病気の人と位置付けることへの違和感を述べた。病気ではないと考えている人に「患者」と呼びかけることで、かえって反発や傷つきを招くかもしれないという理由だ。「お客様」という言葉にはサービス業としての側面だけでなく、相手を病人と決めつけない配慮も含まれていると説明した。
私は、この二つの呼び方を単純な善悪で片づけたくない。「患者」という呼称は医療上の責任を意識させるし、「お客様」という呼称は本人の尊厳や選択の自由を意識させる。重要なのは呼び名それ自体より、診察室で本当にリスクが説明され、必要がなければ断る判断ができるかどうかだ。
断ることも医療の一部
美容整形では、満足できる結果を得るために手術することがある。その一方で、手術しないという選択が本人の生活を守る場合もある。コンプレックスが強くても、今すぐ不可逆的な処置をする必要がないなら、時間を置いた相談や別の方法を検討できる。
「せっかく来たんだから何かして帰りたい」という気持ちはよく分かる。カウンセリングの予約を取り、交通費を払い、勇気を出して訪れたのだから、手ぶらで帰るのはもったいなく感じることもある。でも美容医療では、何もしないで帰ることが、最も大切な収穫になる日もあると思う。
整形依存と医師の責任
美容整形をする人は全員病気なのか
結論から言うと、美容整形を希望する人を一律に精神疾患とみなすことはできない。自分の外見を変えたいという希望も、何度か施術を受けた経験も、それだけで診断にはならない。番組では高須医師が精神的な苦痛を抱える来院者について語ったが、そこで示された数字や印象を、美容医療を受ける人全体の統計として読み替えてはいけない。
人はコンプレックスを抱えることもあれば、変化を楽しむこともある。治療後に気持ちが軽くなったという経験も、思ったほど満足できなかったという経験もあり得る。大切なのは「整形したかどうか」で線を引くことではなく、悩みが日常生活にどれほど影響しているか、本人が自由に判断できているかを丁寧に確かめることだ。
身体醜形症と整形依存は同じではない
動画には「身体醜形症」に関連する話題も登場する。身体醜形症は、周囲からは目立たない、あるいは小さく見える外見上の欠点について、本人が強い苦痛を感じ、考え続けてしまうことがある精神的な健康問題だ。英国のNHSは、外見への心配や他人との比較が日々の生活に大きく影響することがあると説明している。
ただし、気になるパーツがあるだけで身体醜形症というわけではない。鏡を見る時間が長いから必ず病気とも限らない。また、「整形依存」は日常的な表現として広く使われているものの、個々の状態を医学的に判断する際には、症状の内容や生活への支障、ほかの要因などを専門家が評価する必要がある。
イギリスのNICEの診療ガイドラインでは、身体醜形症が疑われる人が美容手術や皮膚科的な処置を希望する場合、専門性のあるメンタルヘルスの医療者による評価を求めている。つまり、気持ちの問題を無視して見た目だけを変えるのではなく、両方を見ていくという考え方だ。
今回の動画に登場した辻医師についても同じで、公開された発言だけで病名を確定させることはできない。高須医師の発言を紹介することと、それを記事の筆者が診断として断定することはまったく違う。「本人は本当に病気なのか」と興味を持ったときこそ、その境界線を守りたい。
SNSの比較が理想の顔を変えていく
毎日スマートフォンを開くと、驚くほど整った顔の写真が流れてくる。しかも、その写真が照明や加工でどれほど変わっているのかは簡単には分からない。次々と似た投稿を見ていると、それが特別な写真ではなく、周囲にいる普通の人の基準のように見えてくることがある。
高須医師は番組で、SNSや自撮りの広がりと、外見を過剰に比較する風潮について言及した。若者のコンプレックスや幸福感への影響を懸念する見解だ。もっとも、SNSを使うすべての人の幸福度が下がったと、動画だけから言い切ることはできない。ここでは現代の美容文化への問題提起として受け止めたい。
私たちは写真に写る数秒の顔だけで生活していない。寝起きも、笑ったときも、仕事に集中しているときも、家族と食事をしているときも同じ顔で生きている。加工アプリが示す理想と、実際の暮らしで心地よい顔が必ずしも一致しないことは、もっと話されていいと思う。
美容医療で起きがちな三つの失敗パターン
ここからは動画を見て私が考えた、誰にでも起こり得るつまずき方を整理する。特定の人やクリニックがこれらに当てはまるという話ではない。施術を検討している人が自分の判断を振り返るための例だ。
- SNSの加工写真を唯一の正解にして、実生活での自然さや機能への影響を後回しにする。
- 前の施術への不満を埋めるため、原因を十分に確かめないまま次の施術を急いで予約する。
- 「今日だけ割引」「モニター価格」という説明に気を取られ、リスクや総額、解約条件を確かめずに契約する。
一つ目は、他人の評価を自分の基準にしてしまうこと。写真の中の理想像は、さらに新しい写真が流れてきた瞬間に更新される。これでは、いくら変わっても終わりが見えなくなる可能性がある。手術で変えたい部分だけでなく、自分がどんな暮らしを手に入れたいのかを言葉にしておくと、判断の軸がぶれにくい。
二つ目は、焦って追加の施術を決めること。術後の見た目や感覚は、時間とともに変化する場合がある。回復途中に自己判断で別の施術を重ねると、現在の状態の評価が難しくなるかもしれない。気になる点があるなら、担当医に経過を確認し、必要に応じて別の医師からも意見を聞きたい。
三つ目は、価格で決めてしまうこと。国民生活センターは、美容医療の相談で、広告より高い契約や即日施術を迫られる事例を紹介している。安く感じる価格は魅力的だが、施術する日を決めるのは割引の期限ではなく、自分が内容を理解したタイミングでいい。
施術前に質問しておきたい七つのこと
厚生労働省と消費者庁は、美容医療を受ける前に、効果だけでなくリスク・副作用、ほかの選択肢、施術の緊急性を確認するよう呼びかけている。私なら、カウンセリング前に次の質問をメモして持っていく。
- 今回の施術でどこをどの程度変えるのか。変えられない部分はどこか。
- しびれ、感覚障害、左右差、傷跡など、どんな合併症が起こり得るのか。
- 回復にはどのくらいの期間が必要で、その間に仕事や生活で困ることはあるか。
- 同じ希望に対して、手術しない方法や負担の小さい選択肢はあるか。
- 担当医は誰で、術後の診察やトラブル時の連絡先はどうなっているか。
- 麻酔や追加処置も含めた総額、キャンセルや返金の条件はどうなっているか。
- 今日決めずに持ち帰って考えてもよいか。
この七つに答えられないことがあっても、焦る必要はない。分からない言葉があればその場で説明してもらえばいいし、納得できないなら予約を取り直してもいい。手術を受けるかどうかを判断するのは、自分の人生に関わる選択だ。急かされるほど一度席を外す勇気が大切になる。
術後の不調や契約トラブルはどうする?
すでに施術を受けて感覚の変化や強い痛み、目の乾燥などで困っている場合は、SNSで同じ経験者を探すだけで済ませず、施術した医療機関や適切な専門の医師に相談したい。症状の評価には診察が必要であり、動画の体験談から自己診断することは避けよう。急激な悪化など緊急性がある症状は、速やかな医療機関への相談が必要になる。
契約や解約について困った場合には、消費者ホットライン「188」で地域の消費生活センターにつながる。契約書、料金の説明、やり取りの記録、広告画面などは整理しておくと相談しやすい。すべての美容医療契約に同じ解約ルールが適用されるわけではないため、個別の契約内容を確認することも欠かせない。
医師の説明を聞いても迷ったら
美容医療には、自分の悩みを軽くする可能性と、健康な身体に新たな負担をかける可能性の両方がある。悩みの大きさも、許容できるリスクも、人によって違う。だからこそ、医師との相性だけでなく、できないことを説明してくれるか、考える時間をくれるかを確認したい。
一度の診察で決められないなら、セカンドオピニオンを求めてもいい。見た目への心配で毎日がつらくなっているなら、美容外科だけでなく、心の健康について相談できる医療機関を検討することも一つの道だ。美容医療を選ぶことと心の相談をすることは、どちらか一方しか選べない関係ではない。
番組で辻医師は自分の希望をかなえる選択の価値を語り、高須医師は患者の安全を守る医療者の責任を語った。どちらも、美容医療を考えるうえで無視できない問いを投げかけている。意見が対立したからこそ、見えてきた問題もあるはずだ。
もう一つ、話題になった「5000万円」という数字を、私たち自身の買い物や契約に置き換えて考えてみたい。高額な施術でなくても、最初は目元だけと思っていたのに、カウンセリングで鼻や輪郭まで気になり始めることはあり得る。周囲から褒められて嬉しくなる一方、別の箇所に目が向くこともあるだろう。そんなとき、一度立ち止まって「最初に解決したかった悩みは何だったかな」と問い直してみる。施術の回数が増えるほど悪いという意味ではなく、目的が変わっているのに気づけるかどうかが大切だ。写真を撮ることが楽しくなりたいのか、人前で堂々と話したいのか、それとも今の自分を誰かと比べる時間を減らしたいのか。目的によっては、手術以外の工夫や環境の変化が助けになる場合もある。予算に上限を決め、生活費や将来の予定まで含めて考えておけば、納得できる選択もしやすくなる。
もし友人から「顔をもっと小さくするためなら、多少の不自由は気にしない」と相談されたら、私はまず希望を否定せず、何が一番つらいのかを聞きたい。そのうえで「手術後に食事や仕事で困る可能性は説明された?」「その状態が長く続いても平気かな?」「別の医師にも話を聞いてみない?」と尋ねると思う。本人が決めることだから何も言わない、という優しさだけでは足りない場面もある。反対に、心配だからといって相手の容姿や価値観を笑うのも違う。大事なのは相手の自由を守りながら、見落としている選択肢に光を当てることだ。医師に限らず、家族や友人にもできる関わり方はある。医療行為を受ける前の一日、冷静に話を聞いてくれる人がそばにいるだけで、判断は変わるかもしれない。少なくとも、焦りや比較でいっぱいのときに、人生を左右する決断を一人で急ぐ必要はない。
美容医療の情報を探すときにも、少し工夫できる。口コミを見るなら良い評価だけを集めず、どんな説明を受けて、どんな部分で戸惑ったのかという具体性に注目したい。施術の直後だけではなく、時間がたってからどう感じているかという視点も重要になる。一方で、匿名の書き込みは事実確認が難しいこともある。誰かの成功談や失敗談を、自分に必ず当てはまる未来予想図として受け取らないことだ。医師の資格、診療の体制、術後の相談先、合併症への対応、料金の説明を自分でも確かめる。派手な宣伝が上手なことと、安心して診療を受けられることは同じではない。動画の議論をきっかけに、見た目だけでなく相談の質にも目を向ける人が増えたら、私はそれが一番意味のある変化だと思う。
そして、まだ美容整形を考えたことがない人にも、この討論は無関係ではない。職場や学校で、相手の外見を何気なく評価していないだろうか。「痩せた方がいい」「もっと目が大きければ」といった一言が、本人にとって長く残ることもある。反対に、外見について触れず、仕事ぶりや気遣い、好きなことへの情熱を認める言葉が救いになる場合もある。美容医療を利用するかどうかは個人の選択だが、その選択に影響する空気は社会全体で作っている。整形した人をからかわないこと、整形していない人を見劣りさせないこと、そして他人の顔に勝手な合格点を付けないこと。こうした小さな態度が、無理に誰かと競わなくてもよい環境につながるかもしれない。
まとめ
今回のNewsPicks「2Sides」で注目された「整形依存症になっていると思う」という発言は、高須幹弥医師が辻大成医師の手術歴や身体への影響について示した見解だ。辻医師は自らの美容整形への累計支出を5000万円超と説明し、感覚の喪失など、施術に伴う不自由さも率直に語った。
一方で、公開動画の発言だけで辻医師に特定の精神疾患があると診断することはできないし、美容整形を受ける人すべてを病気と扱うのも適切ではない。本人の理想を尊重することと、医師が医療上の安全性を判断すること。この二つをどう両立させるかが、討論の核心だった。
私は、美容医療そのものを否定したいわけではない。容姿の悩みが軽くなって、新しい一歩を踏み出せる人もいると思う。ただ、手術の回数や金額を競う必要はないし、誰かの加工写真に自分を合わせる義務もない。大切なのは、見た目を変えた後の毎日まで大事にできるかどうかだ。
もし今、美容整形を考えているなら、リスクを聞き、別の方法を知り、持ち帰って考える時間を取ってほしい。「やらない」と決めても「十分に考えて受ける」と決めても、自分の意思と健康を守れたなら、その選択には意味がある。美容医療の主役は、広告の写真でも話題の医師でもなく、これから毎日を生きる自分自身なのだから。
参考資料・動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=3jjfY6NUOOg / https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04978.html / https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/information_002 / https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230830_1.html / https://www.nhs.uk/mental-health/conditions/body-dysmorphia/ / https://www.nice.org.uk/guidance/cg31/chapter/Recommendations

