パニック障害になると人の視線が気になるようになってしまいます。
今回の体験談は小児患者の入院を担当した時にパニック障害になってしまったお話です。
彼女を救ったのは周りに打ち明ける勇気だった。
小児患者の入院を担当に事件
初めて発作を起こしたのは今から10年前でした。
小児患者の入院を担当した時でした。
これといってきっかけはありませんでしたが、ふと、付き添いの保護者の視線が、自分の一挙手一投足に注目しているように感じました。
書類の説明や点滴処置などをスムーズに行わなければ、不信感を持たれてしまうという圧力から頭が真っ白になりました。
上手くやろうとすればするほど動悸が起こり全身が硬直して手がガタガタと震えました。
結果的に処置を無事に終えることはできましたが、保護者から見れば、私が強い緊張状態であったことは誤魔化しようのない状況でした。
その出来事は自分にとって大きなショックとなりました。
パニック障害の予期不安は人の視線
仕事を休むわけにもいかず、何かの気のせいだと自分に言い聞かせて、だましだまし仕事を続けました。
そのうちに、意識障害のある方や高齢でこちらに関心が向かない患者では発作が起きないことがわかりました。
逆に、小児患者や終末期患者、重症患者において、付き添いの家族が見守る中で患者に接する場面では、強い緊張に襲われることがわかりました。
そのように対象によって症状が起こらないということについても看護師失格だと自分を責めるようになりました。
本来ならば、どのような場面でも全力で看護しなければならないからです。
本で調べて、自己暗示をかけようとしたり、自律神経を整える呼吸法を試すなど、克服したい一心でした。発作が起きそうな状況にあえて自分を追い込んでみたり、可能な限りあれこれ言い訳をつけて対象の患者をはずしてもらったりといろいろしましたが状況は変わりませんでした。
数ヶ月たった頃、このまま看護師を続けるのは無理だと判断し上司に打ち明けることにしました。
職場に相談
気づいてあげられなくてごめんね」と言って話を聞いてくれました。
看護師として、傾聴や共感が大切だとは思ってきましたが、その時初めてその効果を実感したのでした。
自然と涙がこぼれ、一人で克服しようと闘ってきた辛さが癒された瞬間でした。それまでも、友人や同僚に相談してきましたが、発作が起きているようには見えないと言い、真剣に耳を傾けてはくれなかったのです。
しかし、上司に打ち明けだからといって状況は変わりません。精神科受診をすすめられ、パニック発作と診断をうけました。医師からは予期不安は克服しようとすればするほど不安は大きくなって返ってくる。闘おうとしてはいけない。今は休養をとるようにという指示がありました。
3か月休養をとり、その期間で自分の症状に効果的面の薬の処方を受けました。
セルシンとアーチストです。
手足がポカポカして緊張状態をやわらげる効果があり、根拠のない自信がどこからともなく湧いてくる感じでした。
とはいえ、復帰は処置の少ない精神科でスタートしました。
少しずつ仕事にも慣れていきました。
はじめは、自分だけで克服したい、薬に頼りたくない、と意地になっていた自分がいましたが、今では精神科の医師に話を聞いてもらえるだけでもすごく心強いこと、無理せず自分にあった薬と共に生活すること、自分を追い込まず出来そうなことから始めてみることが大事だと分かりました。
つらい体験をしたからこそ、分かることもあり、看護に活かせていると感じています。
1人ではないことに気づけた
内服は手放せませんが、それでもいいじゃないかと思っています。
精神科医師から聞きましたが、医師、看護師の7割は似たようなストレスにさらされているとか…。
1人ではなかったんですね。
同じような状況に置かれている人が心身共に平穏に過ごすことを願います。